マンション内の部屋ごとの相対評価は永遠ではない

年を経て価値が逆転する現象

右の図は、ある都心のタワーマンションの高層階の平面図の概略図です。新築から約19年が経過しています。

新築時の分譲価格は、高い順に並べると、

D 、 B 、 C 、 A でした。

D,Bが高かった理由は「湾岸エリアの海が見える部屋」だった事。BよりもDが高かったのは、「南向き」だったからだと思います。

これが19年経った今、価格の順番はどうなっているでしょうか?

4方向全てのお部屋が同時期に売りに出る。という事は中古市場ではまずあり得ませんので、直近1年間の売り出しと成約事例を見てみますと、一番価値が上昇しているのがA。それにB、Dと続く状況です。

まず、B.Dの価値がAほど上昇していない理由。それは湾岸エリアの再開発が進み海をさえぎるようにビルやマンションが乱立した結果、殆ど海が見えなくなってしまった事に影響されていると考えられます。次にDの価値が上昇していない理由ですが、日本人には「南向きが一番良い」という無意識に近い共有認識が実はあり、自ずと不動産を探す時も南からの陽当たりを重視される傾向が多分に有ります。しかし、タワーマンションにおいては、南向きよりも「何が見えるか?」を基準とする流れに値が変わって来ているというのが最近の傾向です。この点は19年前と今との価値観の変化によるところかと思います。

コロナを経て変わって来た事

更に、19年の間に都心部のマンションやビルの建築もかなりのボリュームで行われて参りました。結果、北側の夜景などは19年前と比べるとキラキラと宝石のような灯りが増えましたので、前述の南向き信仰の低下と相まってDよりもA,Bの価値が高まったと言えるかもしれません。

そして最後ですが、コロナ禍を経て、お部屋で過ごす時間が増えたことでお部屋での時間を快適なものにしたい。という傾向が高まっております。

今回のAのお部屋は遠くに富士山、丹沢。眼下に有名ホテルの庭園や公立の自然の森などが見下ろせる、目に結構なボリュームの緑が飛びこんで来る、豊かな自然を感じられるお部屋で有り、この点が価値の上昇につながったのだと思います。

タワーマンションは特に周りの環境を注意する必要あり

低層マンション等で用途地域の制限上、周辺環境が変わりようの無い立地であれば、相対的な部屋ごとの価値は分譲に比例していくと考えられますが、タワーマンションなどの眺望で価格が変わるものの場合、周辺の再開発や大規模建築の予定の有無などは購入後の価値の変化に大きく影響しますので、購入前に必ずチェックしてみてください。

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